2011年11月5日土曜日

各部写真

玄関とキッチンの間のガラスブロック
玄関ニッチ飾り


玄関吹抜け


居間吹抜け
居間からの景色
居間の飾り(ジェームズ リジ)



1階ウッドデッキ


1階ウッドデッキの欅盆栽
楠 7年後
楠 着工前


外構


建物の契約時点で、抜け落ちている項目の代表に外構がある。
外構とは建物周りの外部の仕上げであるが、門・塀・ポーチ・外部のウッドデッキ・駐車場・植栽などである。
今回の契約では、駐車場一台分の土間コンクリート、門柱門扉、郵便受け、燐地境界のネットフェンスが本体工事に入っている契約になっている。
といっても、契約書に一行その事が書かれているだけで、図面がある訳ではない。どんな仕様になっているかも説明がない。
なかなか、外構まで考えが回らず結局竣工近くになってどうしようかと考え始める。
玄関土間、ポーチ、アプローチ、自転車置き場は400mm角の石張りとし、門柱はコンクリート打ち放しとし郵便受け、表札、インターホンを取り付けた。門扉はない。


駐車場の床は土間コンクリートでは味気がないので枕木と芝生でストライプ状にデザインした。



床石の材料は、こちらで買って支給し施工をお願いした。この辺も契約が終わって竣工間際に交渉したので結局石の材料費だけ持ち出しになってしまった。契約段階でこの辺もしっかり約束する事が望ましい。

8年後の門扉 コンクリート打放し面の雨だれが目立つが、それなりの風合いは出てきた。

ウッドデッキとの間の竹垣



毎年5月には落葉が激しく掃除が大変なのと、どんどん大きくなるので、敷地境界から出ない様に毎年剪定してもらっている。そのため当時のような格好良さは無くなっている。


工事監理


一級建築士の資格を持っているので工事監理は自分でやることにした。
設計図は確認申請に最低限必要な平面図、立面図、断面図しかない。
納まりや軸組については現場監督がいないため、大工の棟梁任せになる。本来、工務店が請け負っているのだから管理者を置いていなければならないはずであるが居ない。
平日は仕事があり昼間は現場に行けないので、夜10時過に帰り道に寄り道して現場を巡回しその日の仕事をチェックし、翌日に携帯電話で連絡する毎日だった。幸い、土日も仕事をしていたので、棟梁との打合は一週間分をまとめて行った。
設計時点ではディテールについては全く決まっていなっかったため工程をよく理解して、材料の刻みや手配の前に指示する必要があった。特に外壁通気や基礎断熱については考え方は打合していたが実際の納まりは検討していないし、外壁のセルロース断熱も初めての経験だったが、密に打合せすることで、色々問題を抱えながらもなんとか納めることができた。
第一回の打合せは、基礎の納まりについて行い、基礎工事担当の鳶さんと大工の棟梁に入ってもらって、
1。床下に入れるシロッコファンが入る高さであること。
2。床下換気口(開閉可能タイプ)が納まる高さ
3。将来の点検のために人が潜って入れる高さ
を与条件に一般に使っている型枠の高さで可能かどうか、断熱材の打ち込みのための間隔が標準のセパで可能かを検討し基礎高さを610mmに決定した。

基礎の断熱材は、ダウ工業のスタイロフォームGK25mm打込とし、基礎立上りは内側に打ち込む。耐圧盤は外周部のみ耐圧盤の下へ打ち込んだ。ここでの失敗は断熱材の材料指定をGKとしたのだが、GKは屋上防水の敷き込み用でコンクリートの打込には適しないとのこと。これが分かったのは実際に材料が現場に入ってきて表面を見ていやにツルツルしているなと思ってメーカーに確認して判明した。
メーカーに打込んだらどうなるかと聞いたらほとんど間違いなくはがれてきますとの回答だった。で、一か八か、鳶さんにわがまま言ってGKの表面を金ブラシでこすって荒らしてもらって打込んだ。結果オーライで、今もはがれずにくっついている。
後貼りする方法もあったが、躯体との間に隙間ができその部分に結露を生じる可能性があるのでできるだけ避けたかった。
毎日現場を見ていても見落とすことはあるもので、間仕切り位置の基礎立ち上がりのための指筋がずれていることを発見したのは、耐圧盤のコンクリート打設後だった。もう一日早く気が付いていれば修正の必要が無かった。現場を良く見ることがいかに大切か思い知った。打設が土曜日で日曜日は鳶さんも休みだったが、ずれてるとの連絡でわざわざ現場を見に来てくれた。

基礎の事前の修正もあり上棟はスムーズに行った。見事のひとことだ。あれだけの木材をあらかじめ刻んでおいて、現場でいっせいに建てて行く。大工の棟梁の刻みの正確さと刻んだ材料の管理の見事さには感心するばかり。一日で土台から棟まで軸ができてしまった。
外壁断熱工事
袋貼りしたシートの中にセルロース(新聞紙を再利用した綿状の材料でカタログ上は、熱貫流率がスタイロフォームRBと変わらない。それを圧送機で充填して行く。軸の厚みが105mmあるので断熱材の厚みも105mmとなる。セルロースの熱貫流率は0.04なので、かなりの断熱効果が得られるはずである。グラスウール断熱との大きな差は細かな綿状の材料を現場で充填するか、成型品をはめ込んで行くかの違いである。実際に現場を見ていると施工管理さえできていれば、全く隙間なく充填されて行くのでこれはなかなか良い材料だと思った。成型品のグラスウールの場合は、筋交いや成型品同士の取り合い部分でどうしても隙間が空き断熱性能が落ちる。またその部分で結露を生じてグラスウールがその水分を吸ってしまいどんどん断熱性能が落ちてくる。水分があるとかびの発生にもつながる。しかし、充填作業をしっかり見ていないと間柱と筋交いで複雑になっている所などはうまく入って無いこともあった。
鉄筋ブレースの納まり
設計図ではピロティ部分に鉄筋ブレースを入れるようになっているが柱、梁との取り合いが明記されていない。大工さんもこの納まりをやったことが無いらしく、柱に穴を空けて鉄筋を入れるだけで良いと思っていたようだ。実際は地震が来た時に引っ張られる方向に力が働くので刺すだけでは意味が無い。これは、こちらで取り合い詳細を作成し指示して作ってもらった。


外壁材料の変更による水平耐力の不足
設計図で外壁の下地に構造用合板倍率3倍の指定があり、設計事務所に確認するとこれを使う前提で筋交いの量をチェックしているとのこと。しかし、外壁は塗り壁のため、この下地を使うと将来のひび割れにつながる可能性が高い。木造建築(住宅)は木割り(モジュール化)が完璧と言っていいほど進んでおり部材どおしの取り合いも、神戸の地震からはクライアントの関心も高いせいも有って、標準的な納まりのものは図面が無くても大工さんが良く勉強していて大丈夫なのだが、ちょっと他と違う納まりをした場合はとたんに細かな指示が無いととんでもない物ができてしまう。また、設計士はプランを作り確認申請が通れば仕事が終わるので、仕事のやりにくさや、後でクレームにつながる仕様などは気にせず図面を作ってしまう。いざ作る段階ではそれをクレームにならないように仕様変更するがそれが耐震基準を満足しないということが起こり得る。
今回は、鉄筋のブレースと外壁の下地の仕様がそれに当たった。
鉄筋ブレースは、木造との取り合いが一切明記されておらず、取り合い金物をこちらで設計し現場で指示する必要があった。(別紙スケッチ)。
また吹き抜けが多く特に一階が構造的には厳しい状態なので、外壁下地は構造的に3倍に評価できる合板下地が設計図に明記されていたが、この下地を使うと塗り壁の場合は、下地の継ぎ目でクラックが入る可能性が高く、”荒し”というモルタル用の下地を使うが、これだと構造的には1倍にしか評価できない。設計図上の耐震性が確保できない事になる。そのため、筋交いを工事中に追加する必要があった。総合的に現場を管理する監督もいなければ設計図どおりに施工されているかをチェックする工事監理者もいないし、設計だけを請負って工事監理はやらない設計事務所と、構造計算上は必要でも実際に使用するとクレームにつながる材料を勝手に変更する工務店との組み合わせでは、なかなか性能を維持することは難しいと思った。
今回は自分自身が工事監理者になり一応のチェックをしていたので手遅れになる前に見つけることができたが、外壁の仕様が決定した段階で自分なりに構造チェックしたことと、設計事務所に確認を取り筋交いを追加することでクリアーした。


棟換気の結露対策
通気システムで、最終的な空気の出口となる棟換気の開口が屋根の最上部についている。冬は、室内で暖まった空気がそこで急に外気で冷やされるため露点温度を下回る可能性がある。棟換気内部の結露は製品として問題ないようになっているが、下部に見えている枠に結露するとそのままロフト天井に落ちてくる。大工さんと相談した結果、結露受けを下に置くことにした。特に排水は取らずためて置いて蒸発を待つシンプルなものとした。
サッシュ枠と断熱材の隙間処理
アルミサッシュを木軸に取り付ける際に、サッシュにビス用のリブがありこの部分がヒートブリッジとなって壁の中に結露する可能性がある。ホームセンターで1本500円でスプレー式の発砲ウレタンが売っているので、買ってきて自分で充填することにした。棟梁の許可をもらい、日曜に工程のちょうど良い時にやった。これは工事監理というより直営工事である。
カラースキーム
内外装の色を決めて、工務店の事務の女性にリストにして渡したが、使う部屋と材料が職人さんに間違いなく伝わるように、決めた見本を5cm角に切り取って使う場所に張った。こうすればまず間違いなくどのクロスをどこの部屋に使うかを間違えることは無い。

外断熱

土地が決まった段階で、建築条件付の工務店との話し合いがあった。事前に土地を紹介してくれた不動産屋を通して、この工務店が外断熱が出来るかどうかを確認したところ、何でも出来るとのことだったので決めたわけだが、後でわかったことだが、この工務店の社長がかなり調子のいい人で、ろくに検討もしないで“やります”としかいわない。
元来建売住宅専門の工務店で明細見積書もなく、間取自由で○○万円/坪とのこと。エアーサイクル工法はできるかと聞くと、何か他の工法と勘違いしたのか○○万円の追加でやります、と言う。土地を決めるまでに、色々な場所の住宅展示場を見て回っていろんな工法を検討したが、一番気に入ったのはフクビがフランチャイズしているエアーサイクル工法だった。もし建築条件が付いてなかったらこの工法が出来る工務店にお願いしようと思っていた。なので、できるかと聞いた訳だが、できますと答えた後からフランチャイズに加盟しないとできないことが判ったみたいで、木軸の中に充填するセルロース断熱を提案してきた。

軸の内側に紙を貼りその中にセルロースを充填する。テープが張ってある場所がセルロースの充填口、外側の縦胴縁は、通気システム用の壁仕上げと断熱材との間に隙間を空けるためのもの。




この段階で外断熱と充填断熱を自分なりに比較した結果、一般に行われているグラスウール断熱の欠点が無いことや断熱性能も外断熱で使うフォームポリスチレンと同等であることが判り、採用することにした。ここで大きく断熱方式は方針転換することになる。但し外壁内の通気に関しては壁の内部結露や断熱性能の向上の点からあきらめられず、自分なりの方法を考えることにした。(通気システム 参照)

結局外断熱は採用できなかったが、建物としての断熱性能は満足している。ただ、外断熱の有利なところは、壁そのものを暖めたり冷やしたりする事が少ないため冷暖房費は少なくて済む事だ。軸組断熱は、壁そのものを断熱材とするが、熱を吸収したり吐き出したりはする。その容量が外断熱に比べて大きいため光熱費は多くかかる計算になるが、実際生活してみると、確かに数日家を空けるとその後冷やしたり暖めたりするのは時間がかかるが、常時生活してるとそうでもない。
軸組断熱でも、グラスウール断熱は、成型品のグラスウールを使用するため、木造軸組とグラスウールとの間に隙間ができヒートブリッジができ易く、壁の内部結露の発生し易い。結露がおこるとグラスウールの断熱性が無くなったり、カビが生え、シックハウスの原因にもなる。
セルロース断熱は、一応この欠点は解決されていると判断できるので採用する事にした。

開口部(サッシュについて)


高気密住宅の代名詞と言えば外断熱と並んで断熱サッシュ+ペアガラスだ。今回の建売仕様は、標準サッシュ+ペアガラスである。しかし、今回の敷地は準防火地域にあるため敷地境界から一階で3m、2階以上は5mの範囲は、隣地からの延焼を防ぐ目的で、建築基準法で定められた、延焼の恐れのある部分となり、ほとんどが網入りガラスとなってしまう。延焼の恐れのある部分は、火災の際にガラスが割れて飛散しない様に法的に網入りガラスを入れる必要が有り(網入りガラスはコストが高い)その部分はシングルガラスが契約条件だった。
これでは窓はほとんどシングルの網入りガラスとせざるを得ず、断熱性能はシングルガラスの性能になってしまい、高気密高断熱住宅にはならない。交渉の結果、居間に使う樹脂製サッシュ(ガラスをはめるサッシュ自体に防火性能が無いので、ガラスだけ網入りにしてもしょうがない。)や大きなアルミサッシュ製の窓は、透明ガラスのペアガラスとするかわり、追加工事でスチール製の手動シャッターを設置する事で、防犯もかねて防火性能を持たせ(網入りガラスの代わりに0.8mm以上の厚みのスチール鉄板でも同じ性能の防火戸になる)、大きな開口部については全てペアガラスにした。しかし、全体の予算の関係から小さな開口部については標準のままとした。

3月に入居してから、気温の低い日は北側の水回りのサッシュに結露が見られた。しかし、同じシングルガラスでも他の部分は結露していないので、結露する部分の湿度を計って見ると冬場の乾燥する季節にもかかわらず70%近くになっていた。空気の対流が滞っているらしい。
断熱性はともかく結露は湿度のコントロールで何とかなりそうな予感がしている。ところで、結露で怖いのが壁の内部結露である。表面が結露しているのだから壁の内部でもサッシュ部分は結露している可能性が大いにある。今回は工事中に自分で発泡ウレタンをサッシュとそれを支えている木枠の間に充填した。製品はインサルパックという名前で3本使ったが完全に金属部分を覆うような施工ができなかったのが悔やまれる。


しかし、壁の内部に気流があるので少しは防げているかもしれない。

8年経って振り返ると、内部結露よりアルミ部分の表面結露が問題な事がわかった。特に冬期に加湿すると、ガラス部分よりサッシュ部分の結露が酷く、多い時は床面を濡らすほどだ。断熱サッシュにする場合はサッシュも断熱性の高い樹脂製サッシュにするのが望ましい。
近年サッシュメーカーが樹脂製サッシュで防火認定を書類審査だけで通していたが、国交省の検査で不合格となり、軒並みサッシュメーカーがリコール対象となる製品の保証をしているが、それだけ断熱性は樹脂サッシュが優れているという事かもしれない。

耐震性


神戸の地震以来、関心が高まっている耐震性能であるが、木造2階建の場合は建築基準法で、壁量計算で簡易に計算することができる。特に厳密な構造計算は必要無い。今回も設計図上は外壁下地に構造用合板(耐震倍率3倍)を使用する。との注記はあるものの構造計算は省略されていた。

耐震性能は、建物が地震による水平力を受けた時に、どこまで耐えられるかで決まる。水平力に対抗する筋交が規定量以上入っているかと、その筋交の配置のバランス良く配置されていて揺れたときに建物がねじれないかどうかという2点で判断する。また、その筋交いの性能を発揮するために地震時に発生する柱の引き抜きに対抗するためのホールダウン金物の量や配置も重要になる。

梁と柱の取り合いや、梁同士の取り合いにはこれでもかというほど金物が入っている。もちろん木造軸組の伝統工法である継ぎ方は行っているのだがそれにプラス補強が入っている。もともと日本は地震国であり、1000年以上前から伝統的に行われている軸組工法であるからそれなりに地震に対しても抵抗力はあるはずなのだが、重い瓦屋根や1階をガレージにするなどバランスの悪いピロティ形式の家は、神戸の震災で倒壊する例が多かったため、補強金物の追加が行われたのだと思うが、せっかくの蟻継など伝統工法を継承する大工さんには少し歯がゆい想いがあるのではないだろうか?